2020.03.27 12:39【読書コラム】コインロッカー・ベイビーズ - 「絆」という名のコインロッカー 執筆者:KJこんにちは!今回も彩ふ読書会(2020年2月横浜)で課題本となっていた本について、コラムを書かせていただきます。お題となる作品は村上龍の「コインロッカー・ベイビーズ *1」。いつものように、ネタバレも気にせず書いていきますので、未読の方はご注意願います。
2020.03.21 12:05読書と初見殺し 執筆者:shikada人が本に求めるものはなんでしょうか。本を読む目的は、十人十色で、本のジャンルによっても、本を読む目的は違ってくるかと思います。私自身も、本を読む目的はさまざまです。小説を読むときは、他人の人生をのぞき見させてもらうことが目的ですし、雑学本を読むときは、知的好奇心を満たすことが目的です。目的うんぬんは考えずに、ただただ文体が好きだから読んでいる作家さんもいます。さて、世の中に多様な本があるなかで、私は、社会問題を扱ったノンフィクションを読むことがあります。そうした本を読む目的の一つに、自分自身に降りかかる不幸を回避するための知恵を得ること、があります。どういうことかと言うと、世の中には、何も知らない人、抵抗する力を持たない人を食い物にしようとする悪い大人...
2020.03.19 11:59『三景 第三景「町田(前編)」』著者:へっけ※前回の『三景 第二景「流通センター」』はこちら 第三景『町田(前編)』 第一節「夏子」 5年前の夏は、例年よりも気温が異常に高く、雨が一度も降らなかった。ニュース番組は、連日のように熱中症で緊急搬送される患者が続出していることを報じていた。そして何故か、蝉の数が多かった気がする。あまりの暑さで正気を失ったのか、蝉の狂ったような鳴き声は、季節が変わってもしばらく止むことはなかった。 当時の僕は、何事にもやる気が湧かない精神状態で、アルバイトを点々とする不安定な生活を送っていた。幸いなことに実家暮らしであったため、寝食に困ることはなかったが、何となく憂鬱な気分が上向くことはなく、幼少期の頃から自覚していた鬱屈とした人間性をより悪い方へこじらせてしま...
2020.03.08 09:55『牛乳』著者:片側交互通行 夜勤明けで疲れて帰ってきて、何を考えていたのかコーヒーを作った。捨てるのもためらわれたので、牛乳を多く入れて飲むことにした。 コーヒーを冷蔵庫の上に置いた。独り暮らし用の冷蔵庫は高さが鳩尾辺りになるので上で作業するのにちょうど良い。 牛乳は使いさしのものがなく新品を取り出した。開け口を開いてマグカップに注ぎ込む。「うわっ」 小さな叫び声が聞こえた。隣の部屋からではない。おかしなことに確かに目の前から聞こえてきた。一人暮らしで他に人はいない。何か奇妙なことが起きている。 手を止めて静かにしていると、「やっと出られたぜ」 もう一度同じ太い声が聞こえてきた。「おい、どこ見てんだよ。こっちだよ、コップの中だ」 声に従いコップの中を覗き込む。しかしそこにあるの...