2020.11.28 08:50ネタバレブロック ~あなたのネタバレはどこから?~ 執筆者:鋤名彦名 先日こんなことがあった。 私は谷崎潤一郎の『春琴抄』を読み、その感想をTwitterに投稿した。それが以下の文章である。「谷崎潤一郎『春琴抄』読了。春琴と佐助の濃密な主従関係。物語的にはシンプルではあるが、とめどなく流れるような独特の文体がある種の異様さを際立たせている。自ら目を刺し盲目となった佐助が春琴にそのことを告げ、あの沈黙がもたらすなんたるカタルシス。そこには人智の及ばぬものがある。」 この投稿の少し後に、私のフォロワーさんがこんなニュアンスのツイートをしていた。「読了ツイートを見るのが好きだが、さらっとネタバレされていると、驚きと少し複雑な感情になる」 このツイートを見た私は、もしかして俺のことか?と思った。もちろんそんな確証はない。別のツ...
2020.11.28 08:45相対化ツールとしての読書 執筆者:shikada最近になって、自分にとって読書が持つ意義について考える機会があった。現時点で考えていることを、記事にして残しておきたい。この文章で述べたいことは次の2つのことだ。1 本は、非同期型のコミュニケーションが行えるツールである2 非同期型のコミュニケーションを行うことで、自分が生きる世界を相対視できるようになるこの2つについて、順番に整理していきたい。①非同期型のコミュニケーション「同期」とは複数の意味を持つ言葉だが、この文章では「時間を一致させること」という意味で用いることにしたい。また「コミュニケーション」はさしあたって「思考や情報を伝える」という意味で使う。コミュニケーションは、この「同期」を行うものと、そうでないものの2種類に分けられる。同期を行うも...
2020.11.24 13:31『ダストバニー・イン・マイ・ヘッド(第一回)』著者:へっけ※前回の『ダストバニー・イン・マイ・ヘッド(序章)』はこちら「風が嫌いなんだ」 俺は思う。 生まれてこのかた十五年、風を好きになることなんて一度もなかった。 小学校の入学式の帰りに吹かれた春風、初めて見に行った隅田川の花火大会で吹かれた夏風、三好家菩提寺の境内で焼き芋を食べながら吹かれた秋風、去年のクリスマスで神田鈴に振られた直後に吹かれた冬風。 俺は風に吹かれる度に愚痴をこぼしてママを困らせる。 ママは苦虫を噛み潰したような顔でこう答える。「前にも言ったけど葉(よう)は気にしすぎだって。頭が気になっちゃうから風が嫌なんでしょ? ママはその頭、悪くないと思う」 適当に受け流そうとしているけれど俺はもう高校生だからそんな子供騙しには乗らない。「ママは慰...
2020.11.19 15:54『十一月二十二日』著者:ののの「わかちゃんってさ、変わってるよね」「え?」 それは、わたしに審判が下された日。「こんなの書いててさ、なんか暗くない?」 小学三年生だったか四年生だったか。記憶は定かではないけれど、まだわたしがそれほど周囲を疑わず、純粋だったころだ。クラスの子から喧嘩を売られた。唐突に感じたけれど、きっと普段から煩わしかったのだろう。彼女の名前はもう覚えていないのでAとしよう。Aは、わたしと友だちが二人だけで楽しんでいた交換ノートを手に持っていた。教室の真ん中で、鬼の首をとったかのように誇らしげにノートをひらひらさせた。クラスの子たちに注目されて興奮でもしたのか、彼女はノートの内容を面白おかしく朗読した。「Bちゃんもこまってるって言ってたよ」 Bちゃんとは、わたしと一...