2020.07.25 00:38『空へ』執筆者:へっけ ① 君が家の何処かで咳き込んでいて、その音は僕の部屋まで響いてくる。 僕は部屋から顔を出して廊下を覗いてみると、キッチンの手前あたりで床に寝そべった君を見つける。とても苦しそうで痛々しい。 「苦しそうな」と言うのは僕の主観でしかなくて、君は表情を少しも歪ませていない。 君の咳き込む姿が見ていられなくて、僕が苦しんでいるのかもしれない。 見ていることしかできない僕は、君が死んでしまうんじゃないかと心配になる。 僕にできること、と言うよりしなければいけないことは君を一刻も早く医者に診せることだ。心配している場合ではないのだ。 君を籠に入れると、かぼそい声でしばらく鳴き続けていて、僕はとても酷いことをしている気がして、通院をやめるか悩む。 いや、あれだけ...