2020.04.24 14:07【特別企画】リレー小説『読書会』この度、特別企画としてリレー小説を書きました。テーマは『読書会』。7名の参加者でリレーしました。※章の横は担当者の名前です。1(鋤名彦名) 私は今、ある高層マンションの下にいる。送られてきたDMに書かれた住所を入力したグーグルマップは確かにここを指している。あの人はこのマンションの最上階にいるらしい。じっと最上階の方を見上げていると首が疲れてきた。私はまだにわかには信じられずにいる。もう一度DMに書かれた文面を見た。「・・・つきましては我が家で拙著の読書会を開きます。ぜひご参加頂きたい。」 それは一週間前の事だった。「バベル」の名前で読書感想を主に呟いている私のTwitterアカウント宛にDMが届いた。送り主は小説家「犬神和音」からだった。「突然のダイ...
2020.04.06 10:56『三景 第三景「町田(中編)」』著者:へっけ※前回の『三景 第三景「町田(前編)」』はこちら第三節「嶺(れい)」 1 初めて、夏子と古書店に出かけた日を境に、僕等は休みの日が重なると、いろんな場所へ赴くようになった。互いに緊張しながら、手を繋いだり、時には腕を組んだりして。 新宿の紀伊国屋書店、谷中銀座のアップルパイ、下北沢のライブハウス、町田のリス園。会う度に、夏子への思いは強くなっていく。最初は、言葉で思いを表現することが少なかった夏子も、日常で起きる「美味しい」とか「悲しい」とかの些細な感情を言葉にしてくれるようになった。 引きこもり生活を送っていた頃には想像もしていなかった、ひとりの女の子を中心に捉える僕の生活。中々なれない施設でのフルタイム勤務。労働で得た給料は、全て夏子との交...
2020.04.05 10:01心の支え 執筆者:けんとん皆様こんにちは、いかがお過ごしでしょうか?新型コロナウイルスの影響で混乱されている方も多いかと思います。今は実際に触れたり、訪れたり、そして話たりということが難しい時期です。僕たちができることは限られてきています。しかし裏を返せば選択肢が減り、行動しやすくなったとも言えるのではないでしょうか?人間は多くの選択肢に囲まれていると決断できなくなるという研究データもあります。僕は今大切な事はインプットだと思っています人と会うことに使っていた時間を自分の知識や教養や興味を増やす時間に変えてみてはどうでしょうか。幸い今はインターネットが発達しています。本は電子書籍で読めます。映画も配信サービスが充実しています。そうすることでネット社会の良いとこ取りをしてもっと明...
2020.04.05 02:11『マリィ』著者:鋤名彦名 そこに死があった。ひび割れた灰色のコンクリートの上に横たわるそれは、死そのものを自ら誇示するかのように存在していた。それはやや青みがかった彼の眼球の表面に、発光するもののように映った。彼はその場所へと導かれるように歩みを進めた。 それは犬の死体だった。犬種は分からないが中型犬といわれる部類だろう。垂れ下がった逆三角形のような耳、鼻面はそれほど長くはない。頭部は赤茶色の毛で覆われているが、首元辺りからは黒色に変わり、胴体は黒と白の斑になっている。恐らく雑種であろうと彼は思った。元は青色に塗装されていたと思われる革製の首輪が付いているが、表面はひび割れ、塗装はほぼ剥げていた。首輪が付いているという事は飼い犬だったのだろう。 彼はその死体にマリィと名付けた...