2019.02.28 13:51『全力疾走』著者名:ののの 今日も上司に小言を言われた。わたしの勤務態度がお気に召さないらしい。 ――ボクはいつも1時間前に出勤してるんだけどね。君は良いねえ。ボクは有給休暇なんて一回も使った事がないよ。君は良いねえ。え、もう帰るの? 君は良いねえ。 えびす様のような顔つきと体型の上司は、優しそうな雰囲気に溢れている。笑う時はガハハと豪快でよく笑うから役員の方々からは非常に気に入られている。声を荒げて部下を叱責するような事もないし、よく話しかけてきてコミュニケーションも取っている。一見優しそうな人。でも、わたしは知っている。いつも目が笑っていない事に。元々細い目をしているからいつも笑っているように見えるのだけど、目の奥が全く光っていないのだ。物言いも別にこちらを責めているわけで...
2019.02.28 13:40『タイトル論』執筆者:Arata.Sみなさん、タイトルはお好きですか?俺は大好きです。昔からずーっとそうでした。タイトルを見て本を買い、映画を見て、音楽を聴いてきました。それくらいタイトルは、作品選びにおいて大切な基準です。基準、なんて格式ばった言葉を使っていますが、単純に良いタイトルの作品は中身も伴っているんじゃないかなと、そう思っているだけです。タイトルは本当に大事な言葉です。軽視している作家さんは、世界中誰一人いないでしょう。いたら俺と雑談しましょう。電話しましょう。「いま、会いにゆきます」「君のタイトルは。」「題ハード」「万葉集」が「二葉集」だったら、掃いて捨てられるでしょう。「金閣寺」が「きんかくし」だったら、小学生だって笑わない。「葉隠れ」が「雲隠れ」だったら、なに一つ見つか...
2019.02.28 09:02【私情まみれの書評】ひきこもりの弟だった/執筆者:まりこんにちは。今回は2019年1月27日に開催された彩ふ読書会で初参加の方の推し本『ひきこもりの弟だった』を登場人物毎にネタバレありで紹介したいと思います。タイトルにある通り最初は書評を書こうと思っていましたが、感想を綴っているうちにヒートアップして色々と崩壊しました←読まれる方は上記ご了承の上お読みになって下さい。
2019.02.24 09:12『愛に、鬱血。』著者:鋤名彦名 いつ頃からだろうか、私は将とセックスをしてる時大体が正常位の時だけれど、私の首を絞めて欲しいとお願いするようになった。世間では窒息プレイだとか首絞プレイだとか言われる類の、いわゆるアブノーマルな行為だ。最初は気味悪がっていた将も私が首を絞められて苦しんでる間、どうやら膣の締まりが良くなるみたいで、将もそれが気持ち良いらしく頼むといつもやってくれるようになった。 なぜそんなことを言い出したのか、明確な理由は私にも分からない。将に私の生死の天秤を委ねてみたかった、なんて考えは飛躍しすぎだろうか。もしかしたらそのうち何か事故でも起こって私はそのまま死ぬかもしれない。でも私はいつか将がいとも簡単に天秤を死に傾ける瞬間を待ち望んでいるのかもしれないと苦しみと快...
2019.02.17 12:02『春へ』執筆者:へっけ 仕事から帰り、家の扉を開けると、玄関の縁にかけた柵越しに、物欲しそうに瞳を潤ませて出迎えてくれる。彼に「ハル」と名前をつけたのは、「春」に生まれたから、という訳ではなく、ただ猫の名前をインターネットで調べたら、上位に組み込んでいたから、というつまらない理由だ。他に「モモ」と「クー」という名前の猫も飼っているが、最も私になついてるのがオスのキジトラ「ハル」である。 部屋に入って着替えていたら、いつの間にか万年床に横座りして「ちゃっちゃっと着替えて、俺の背中をさすってくれな。いつものように、顎のマッサージもセットだからな」と言わんばかりのだらけきった表情を見せている。 しかし、その訴えに対して気怠く感じいるのが、現在の私の本音だ。飼い始めたばかりの頃なら...
2019.02.12 13:09『日の名残り』について 感想 執筆者:ちあき この記事は、カズオ・イシグロ著『日の名残り』の、ネタバレを含みます。 未読の方は、ご注意ください。 本記事は、カズオ・イシグロ『日の名残り』土屋政雄訳 早川書房を読んだ感想です。
2019.02.02 07:45【読書コラム】サラバ! - 読めない空気と嫌われる勇気 - 執筆者:KJ はじめまして。今回初めて彩ふ文芸部に投稿させていただくKJです。今回は2019年1月の読書会で課題本になった西加奈子さんの小説『サラバ!』についてのコラムを投稿いたします。ネタバレは気にせず執筆いたしますので、未読の方はご注意ください。